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できない上司を管理する方法(後編)How to manage bad boss

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年9月22日
  • Reading time:11 mins read

ダメ上司や悪い上司は世の中に五万といます。しかし、不満や文句を垂れているだけでは何も進みません。そのポジションまで上り詰めたからにはどんな上司にも必ず何らかの強みがあります。その上司の強みを活かすのです。そして、上司の弱点は自分がカバーするのです。もしあなたが大きな目的のために働いているのであれば、それができるはずです。

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はじめに

今回は前回書いたできない上司をマネージする方法(後編)How to manage bad boss」の後編です。

50年以上に渡りリーダーシップについて研究してきたジョン・C・マクスウェル(John C. Maxwell, 1947 -)は、彼がリーダーシップに関するスピーチをおこなってきたコンフェレンスのほとんど全てで、参加者から次のような質問を受けてきました。

「とても素晴らしいレクチャーをありがとうございます。しかし、私では会社に導入できません。なぜなら私は組織のリーダーではありませんし、さらに言えば、ひどい上司の下で働いているからです。」

そこでマクスウェルは、そのようなひどい上司の下で働き、悩める従業員たちのために本を書きました。2019年発刊の「How to Lead When Your Boss Can’t or Won’t(邦訳)上司にリーダーシップがない場合、どうリードするか?」です。

前回の記事では、この本の中から、組織で働く多くの人たちが悩み苦しむ「できないリーダーたち」の特徴について紹介しました。
今回はその後編として、そのようなリーダーの下で苦しんでいる人たちは、いったい何をどうすべきなのかを紹介していきます。

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カラスとウサギ

ある寓話があります。

カラスが木にとまっていて、一日中何もしていませんでした。
小さなウサギがカラスに尋ねます。
「私もあなたのように一日中何もせずに座っていてもいいんでしょうか?」
「もちろん。なぜダメなの?」カラスは答えます。
そこで、ウサギはカラスに倣って、地面にずっと座っていることにしました。
しばらくすると、突然キツネが現れて襲い掛かり、ウサギは食べられてしまいました。

この話の皮肉な教訓は、もし一日中何もせずに座っているなら、低い所にいるのは危険で、高い所にいる方がリスクが少ないということです。もし、あなたがウサギのような境遇にいるのであれば、何もせずに座っている余裕はありません。

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セルフリーダーシップを高める

組織やチームを導くことのできないリーダーの下で働くことほど、ストレスが溜まることはありません。何よりいらだたせるのは、そのボスたちのほとんどが自分の欠点に気づいていないことです。

リーダーシップレベルの高いリーダーたちは、レベルの低い人たちを容易に見極めることができます。しかし、レベルの低いリーダーは、レベルの高い人たちを見極めたり、その人たちの何が優れているかを認識することができません。自分の何が劣っているのかを知ることもできません。

レベルの低いリーダーたちは世の中に無数に存在しますが、その下でフラストレーションを抱え、やる気をなくして、与えられた仕事を適当にすませたり、不満や文句ばかり並べて何もしなければ、自分もいずれ、先ほどの寓話のカラスのようになるか、ウサギのように食われてしまうかのどちらかです。

ダメ上司の下でやる気をなくして自分の責任を放棄してしまうこと、これは組織で働く多くの人たちが陥る罠です。

一方で、ダメ上司の下で働いていて「自分が上になったら、こうするんだ!」と思う熱い従業員も少なからずいます。しかし、上に立つものの重圧を理解しようとせず、何も準備せずにただその時を待っているだけでは、いざその役割を与えられても責任を全うすることができません。結局、文句を言っていた上司と同じような上司になっていることも珍しくはありません。

例えダメ上司の下で働いていようが何であろうが、私たちは何よりもまず自分自身をリードしなければなりません。自分がすべきことを確実に実施し、自分に課せられた責任を果たさなければなりません。

私たちに必要なのはセルフリーダーシップ(self-leadership)、つまり自分自身を導く力です。
そして、とても重要なことは、セルフリーダーシップはリーダーになる前に築いておかなければならないということです。

「意味のある決断」は誰にでもできます。ダメ上司にもできます。
しかし、できない上司リーダーたちはそれを実行に移せません。真のリーダーは決断を実行に移します。
もしあなたが口ばっかりで実行に移さない上司の下で働いているのならば、そのような上司のようになるのではなく、自分が決断を実行に移すのです。そのために必要な勇気と実行力はリーダーになる前に獲得しておかなければなりません。リーダーになってから自動的に獲得できる能力ではありません。

また、セルフリーダーシップを持つ人たちは、自分の感情をコントロールし、よく考えた上で自分の意思で行動できます。

ひどい上司はあなたに理不尽になったり、あなたの仕事を妨害してくるかもしれません。しかし、感情的に反応していては、結局自分自身が損をします。

セルフリーダーシップを持ち、自分よりももっと大きな何かを大切にしているのであれば(それがあなたがリーダーに望んでいることでしょう)、上司の不合理さに対して感情的に反応したいという衝動を抑えることができます。「上司がどう行動すれば、自分は快適に仕事ができるのか」を考えるのではなく、もっと大きく長い視野を持ち「自分がどう行動すれば、チームが必要とするものを満たすことができるのか」を考えるからです。

物事を解決しようとする意図なく対立しないこと
価値のないストレスや重荷を背負い続けないこと
方向性を見定めることなく闇雲に行動しないこと

リーダーシップは役職や肩書とはまったく関係がありません
セルフリーダーシップは、セルフマネジメント(自己管理)であり、セルフディシプリン(自己規律)です。自分を律し、自分より大きなものを心に高く掲げ、その責任を受け止めること、そして、その実現に注力し、そのために前進することです。

リーダーシップとはモラルであり、信念であり、動機であり、態度であり、姿勢であり、雰囲気です。

セルフリーダーシップを持つ人たちは周囲によい影響をもたらします。影響力こそがリーダーシップです。セルフリーダーシップほど、一緒に働く人たちに良い印象を与えるものはなく、周囲の人たちがあなたこそが真のリーダーであると認めるものはありません。

もしあなたが自分を導くことができないのなら、他の人は付いてきません。
もしあなたが自分を導くことができないのなら、他の人はあなたに敬意を持ちません。
もしあなたが自分を導くことができないのなら、他の人が進んで協力することはありません。

図:リーダーとリーダーシップの関係

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上司と協働する方法を見出す

では次に、実際に私たちはひどい上司とどう向き合えばよいのかを見ていきましょう。

1.まず自分の仕事をしっかりおこなう

これは先ほども述べました。セルフリーダーシップです。
上司の欠点を指摘したり、上司の何かを変えようとすることはあなたの仕事ではありません。
人のことをとやかく言う前に自分がすべきことに責任を持ち、しっかり自分の仕事を全うすることが何よりも大切です。

2.上司との誠実な関係を構築する

悪い上司の下で働くとき、ほとんどの人が最初に取る自然な行動は、その上司から距離を置こうとすることです。
それは自分を守りたいという衝動から来るものですが、その衝動と戦う必要があります。
悲しいかな、会社という仕組みの中では、上司を敵に回してもあなたに勝ち目はありません
上司に指導力がないからといって、上司を敵にしてはいけません。むしろ、距離を狭め、上司のことをよく知ろうと努めるのです。組織の使命に対するコミットメントを持っていれば、感情に振り回されず、堅固な職業上の関係を築くことができるはずです。

3. 上司の長所を特定し、最大限活かす

キャリアで成功するための道は、自分の強みを活かすことです。これは上司にも当てはまります。
組織のあるべきマネジメントの姿は、従業員の弱みではなく、強みにフォーカスする経営です。これは組織の下から上に向けても当てはまります。

つまり、あなたも上司の欠点ばかりにフォーカスせず、上司の強みを見出し、それを活かし、利用するのです。

誰にでも短所があり、長所があります。
たとえ無能に見えるリーダーであっても、そのポジションまで上り詰めたからには必ず何らかの強みがあります。じっくりと振り返って探し出してください。指導力や人を導く力はないかもしれませんが、社交性や、専門性や、細部へのこだわりがあるかもしれません。直接、今までの経験を聞いてみてもよいかもしれません。

そして、あなたは、その上司の強みがチームや組織にどのような利益をもたらすかを考えるのです。

「なぜあのクソ上司をわざわざ助ける必要があるんだよ!」と思う方もいるでしょう。

でも、他にどんな方法がありますか?
組織の中で他の人たちの強みを活かさず自分の力だけでやっていけますか?
あなたが上司にネガティブな感情を持ち続け、文句を垂れ続けることで物事はうまく進みますか?

今の状況から抜け出したいのであれば、上司を利用し、上司を助けるのです。

4. 上司の弱点を補う方法を見つける

優れたリーダーは、自分の強みを活用するだけでなく、自分の弱点を他の人たちを利用することで補います。
あなたが完璧でないリーダーの下で働いているのなら、その弱点はすでにはっきり見えているでしょう。上司の弱点を自分が補うのです。

この問題に取り組む際に重要なのは、上司の弱点を決して本人に指摘してはいけないことです。指摘することなく、黒子のようにその役割を果たすのです。そして、上司が最も得意なことを自由に快適にできるようにするのです。これはチーム全員にとっても有益になります。

図:リーダーをリードする(Lead a leader)

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地位に頼るリーダーは、最もレベルの低いリーダー

多くの人が、ボスの呪縛から逃れるためには、自分がそのポジションまでたどり着かないとならないと考え、その時がくるのを待ちます。しかし、それでは遅いのです。権限や地位は重要ではありません。
リーダーシップに関して多くの人が抱いている最大の誤解が、リーダーシップは役職や権限や肩書きから生まれるという思い込みです。これは真実ではありません。

リーダーシップとは影響力です。リーダーシップとは権力や立場を盾に他人に何かを強制する権限ではありません。むしろ、周囲の人たちに自発的に何かをしたいと感じさせる力です。

物事を成し遂げるのに、地位や肩書を持っている必要はありません。また、成功するために優れた上司の下で働く必要もありません。チームのメンバーと良好な関係を築き、仕事を成し遂げるために必要なのは、自分自身の影響力を伸ばすことです。

「地位」に頼るリーダーは、最も低いレベルのリーダーシップしか持ち合わせていません

人が無能なリーダーに従うのは、立場上従わなければならないからです。地位に頼るリーダーの武器は強制力です。しかし、強制力は影響力ではありません。地位に頼るリーダーの力は、職務権限の範囲を超えることがなく、最低限の成果しか得ることができません。

役職に付随する権限が失われたとき、地位に頼るリーダーには何も残りません。そして、付いてくる人も誰もいなくなります。すでに地位も権限もなくなって、もはや誰も付いてきていないのに、一人で偉ぶっている人たちがあなたの周りにもいませんか?

影響力のある真のリーダーには、仮にそのリーダーに役職や肩書がなくても、人は付いていきたいと思うものです。言われたからではなく、自ら望んであなたに付いていくのです。付いていくことで、自分だけでは届かないところにたどり着くことができると思うからです。

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さいごに

以上、前回と今回の2回に分けて、ジョン・マクスウェルの「How to Lead When Your Boss Can’t or Won’t(邦訳)上司にリーダーシップがない場合、どうリードするか?」を紹介しました。

この本には、紹介した内容以外にも素晴らしく具体的な教訓が詰まっています。日本語版がまだないのが残念ですが、分かりやすい英語で書かれていますので、ぜひお手に取って読んでもらいたいと思います。

なお、もしダメ上司がこの記事を見つけても、部下に対して「君はここに書いてあるように振る舞うべきだ。君はまだまだできていない!」などと押し付けてはいけませんよ。それはホントに最低な上司です。もし、上司であるあなたがもっとまともであったなら、部下はこんなに苦労しなくて済むのです。会社としての成果ももっと出ているはずだったのです。まずそこを理解することです。そして、自らを省みてください。

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