You are currently viewing できない上司を管理する方法(前編)How to manage bad boss

できない上司を管理する方法(前編)How to manage bad boss

  • 投稿カテゴリー:組織が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年7月7日
  • Reading time:12 mins read

真のリーダーシップを発揮して組織を次のレベルに引き上げられるリーダーはごくわずかです。ほとんどの組織のリーダーにはその能力がなく、下の従業員たちに責任と問題を押し付けます。多くの人たちは能力のないリーダーの下で働いています。今回は前編として、できない上司の特徴とその影響を紹介します。

~ ~ ~ ~ ~

はじめに

組織改革や、組織開発、組織活性化に関するセミナーやウェビナーが相変わらずたくさん開催されていますね。
特にコロナ後はウェビナーが完全に定着し、その種のオンラインイベントは毎日のように見つけることができるようになりました。

そのような組織改革ウェビナーに、会社組織で働く中間層の方々が多く参加しています。そして、ウェビナーのプレゼン後のQ&Aセッションで、次のような質問が参加者から出ることがあります。

「今日は貴重なお話をありがとうございました。しかし、私のような中間職がいくら頑張って今回お聞きしたようなことを取り入れようとしても、当社の経営者や上司は口では調子の良いことを言うものの、実は関心がなく、うまくいきません。そもそも経営者や上司が取り入れるつもりもない新しい取り組みを、どうすれば組織に導入できますか?」

それに対して「あ~、それは無理ですね。勤務先を変えることを考えてはいかがですか?」というとても残念なアドバイスをする専門家やコンサルタントの方がいらっしゃいます。
つまり、この方々たちは、もっとまともな会社で働けと言っているのです。しかし、多くのことがうまく機能する会社で、悩みもストレスも少なく働いているのであれば、あるいは簡単にそのような会社に転職できるのであれば、そもそもこのようなセミナーには参加していません。そして、その専門家の方々が思うような「まともな会社」は、世の中ではごく一部の会社に限られます。すべての人が「まともな会社」で働くことはできないのです。

~ ~ ~ ~ ~

上司にリーダーシップがない場合、どうリードするか?

50年以上に渡りリーダーシップについて研究してきたリーダーシップの権威であるジョン・C・マクスウェル(John C. Maxwell, 1947 -)も、彼がスピーチをおこなってきた数多くのコンフェレンスの場で同様の質問を受けてきました。

「とても素晴らしいレクチャーをありがとうございます。しかし、私では会社に導入できません。私は組織のリーダーではありませんし、さらに言えば、ひどい上司の下で働いているからです。」

この記事を読んで頂いている企業で働く方々の中にも、同様の悩みは多いのではないでしょうか?

組織のピラミッドの中間辺りにいて、やる気も指導力もない上司の下であえぎ苦しんでいる方です。会社を良くしたいという思いも意欲もあります。アイデアもいくつかあります。しかし、組織を変えたいと思っても、自分にはそこまでの大きな権限もなく、逆に権限がある人間には気概も能力もなく、完全に行き詰っている方です。

そこで、ジョン・マクスウェルは、そのような人たちに向けた本を書きました。2019年発刊の「How to Lead When Your Boss Can’t or Won’t(邦訳)上司にリーダーシップがない場合、どうリードするか?」です。

この本を、今回と次回の2回に分けて紹介します。
前編の今回は、多くの中間層が悩み苦しむ「できないリーダーたち」の特徴について紹介します。

そして、次回後編では、そのようなリーダーの下で働いている人たちが、いったい何をどうすればよいのか紹介します。

マクスウェルはリーダーシップに関する書籍を数多く書いていて、私も今までに買った何冊かを不定期に読み返しています。

リーダー本やビジネス本の中にはもっともらしいことを書いているわりには、言っていることが曖昧で、分かった気にはなるが具体的に何をすべきかよくわからない本も少なくない中で、マクスウェルの著書は、簡潔で読みやすく、とても的を得ていて実践的な上に、彼の「人となり」が文章に表れていて、読み返すたびに背筋が伸びる気がします。

なお、彼の書籍の多くが日本語に翻訳されていますが、残念ながらこの本はまだ日本語版が出版されていないようです。そのうち翻訳されるかもしれませんが、それほど難しい英語ではありませんのでご興味のある方は原書でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


~ ~ ~ ~ ~

リーダーシップのないリーダーの特徴

では、リーダーシップのないリーダーとは具体的にはどのような人たちなのか、まず、そのパターンを見ていきましょう。

1.臆病なリーダー Insecure leader

まず最初のパターンは、自己防御に徹する臆病なリーダーたちです。臆病なリーダーは、すべてのことを自分中心で考えます。あらゆる行動、あらゆる情報、あらゆる決断が、いかに自分に有利か、自分に不利にはならないかという、自己中心的なフィルターにかけられます。

自分の部署の誰かが優れた業績を上げると、彼らはその人の出世を妨げようとします。チームの成果が悪くなると、それが自分の責任であるにもかかわらず、部下に怒りの矛先を向けます。
臆病なリーダーたちは、すべての人たちが成長せず、現状維持してくれることだけを望みます。彼らは、人事部長に次のように書かれた指示書を送る社長のようなものです。

「私の後を継ぐことができるような、注意深く、積極的な若く優秀なリーダーを組織から何としてでも探し出すのだ。そして見つけたら即刻クビにするのだ!」

臆病なリーダーは部下を不安がらせるのが大好きです。部下が成果を出し自信をつけ始めると「揺さぶり」始めます。

リーダーの臆病さは伝染します。部下はその部下へ、臆病さや不安感をひろめていきます。もし、あなたがそのような臆病で自信のないリーダーの下で働いているのなら、その連鎖を断ち切り、あなたの下で働く人たちに安心感を与える勇気を持たなければなりません。そうしなければ、あなたの部下も、その将来の部下たちも苦しむことになります。

2.ビジョンのないリーダー Visionless Leaders

ビジョンのないリーダーは、その下で働く人たちに2つの直接的な問題を引き起こします。
第一に、組織を前進するための方向性やモチベーションを与えることができません。
第二に、そのようなリーダーには高い理念や情熱がないため、従業員に火をつけることもできません。彼らがワクワクしながら働けるようなポジティブな環境を作ることができません。

もし、あなたのボスにビジョンが欠けているのならば、組織のビジョンを自分がチームのメンバーに伝え、自分のチームがどのように貢献できるかを思い出させる必要があります。たとえ上司に情熱がなくても、あなたは情熱を示すことができます。

3.無能なリーダー Incompetent Leaders

無能なリーダーは自分が無能なだけでなく、メンバーを非効率、非能率的にさせて影響を拡大させるとても厄介な存在です。つまり、無能なリーダーは、自分が率いる組織に「蓋」をするのです。

無能なリーダーと一緒に仕事をすれば 、仕事は非生産的、非効率的になるだけでなく、チーム全員が、彼の欠点を補うためにより懸命に働かなければならなくなります。ボスがチームを率いるのではなく、病人を介護したり、気難しい犬を引き連れるように、チームがボスを引っ張っていかなければなくなるのです。

4.自己中心的なリーダー Self-Centered Leaders

自己中心的なリーダーは、周囲を犠牲にしてでも自分が出世したり、すでに出世している場合はその地位をできるだけ長く保持しようとします。リーダーとしての地位に付随する権限を、組織のためではなく自分のために独り占めします。

もし、あなたがリーダーになって自分が持っているものを何でも下の人たちと分かち合えば、彼らはあなたのために一生懸命働いてくれるでしょう。

5.カメレオンリーダー Chameleon Leaders

リンドン・ベインズ・ジョンソン第36代大統領は、大恐慌時代に職を求めてテキサスの丘陵地帯にやってきた、失業中の若い学校教師の話をよくしました。

地元の教育委員会から「世界は丸いのか、それとも平らなのか」と質問されたとき、教師の職を強く求めていた彼は「私は両方の説を生徒たちに教えることができます!」と言い放ちました。

カメレオンは、状況によって自分を変えます。カメレオンリーダーについていくとき、部下たちは彼がどう反応するかに神経をすり減らします。仕事を成し遂げるための貴重な時間とエネルギーが、リーダーの次の行動やその日の気分を推測することに費やされます。

もしあなたがカメレオンリーダーの下で働いているのならば、上司の機嫌取りに忙殺されるのではなく、自分の仕事を成し遂げ、組織のビジョンを実現することに集中するのです。

6.政治的リーダー Political Leaders

カメレオンリーダーと似ているのが政治的リーダーです。しかし、カメレオンリーダーの問題は感情や気分であることが多いのに対して、政治的リーダーは出世欲に突き動かされています。

組織のパーパスや利益、ステークホルダーの幸福よりも、政治的野心に基づいて決断を下す人に従うのは困難です。そのような人たちの権力争いに巻き込まれないように、ある程度距離を置くことが大切です。

7.コントロールフリーク・リーダー Controlling Leaders

部下のすることすべてに口を出したがる人の下で働いたことがあるでしょうか?
有能な人間にとって、これほどイライラさせられることはありません。マイクロマネジメントで部下を妨害し続ける限り、組織に勢いを生み出すことはできません。

マイクロマネジメントをする人は、多くの場合、業務上必要以上の完璧さを求めているか、自分ほど仕事ができる人間はいないと思っているかのどちらかです。

このような上司の下で働く場合、逆に上司にしつこいくらい情報提供、報告し続けることです。そうすれば、上司はあなたを信頼し始め、コントロールしようとしなくなるかもしれません。

~ ~ ~ ~ ~

リーダーシップがない組織が陥る結果

組織が成長するか衰退するか、すべてはリーダーで決まります。
組織を正しく導く人がいなければ、必ず組織は長期的には衰退の道をたどります。

次に、リーダーシップがないリーダーが率いる組織に現れる症状を紹介しましょう。

1.決断が遅い

優れたリーダーは優れた意思決定者でもあります。リーダーシップのないリーダーは決断ができないだけでなく、その過程で従業員たちに様々な手間を取らせたり、余計な仕事をさせたりして、膨大な時間と費用を無駄にします。あるいは問題の初期消火にすぐ取り掛からず様子を見ているうちに、大火事に発展させてしまいます。

2.アジェンダが拡散していく

リーダーは、パーパス、ビジョン、ミッションなどの理念を掲げ、それを自分のものとして強く受け止め、組織をまとめ、意思統一を図らなければなりません。

リーダーにリーダーシップがない組織では、従業員は会社の目的に対してではなく、それぞれの思惑に従い動き始めます。そして、いつの間にか、みんながそれぞれのためにそれぞれのことをするようになります。

3.対立が拡大する

リーダーの最も重要な役割のひとつは、組織内の対立やコンフリクトの解決です。優れたリーダーは、問題を解決するために立ち上がり、全員を同じテーブルに寄せ集めます。リーダーは常に、対立を解決するために必要なことをする準備ができていなければなりません。

しかし、リーダーシップのないリーダーは対立を見て見ぬふりをします。そして、対立を解決できないのはリーダーたちの問題であるのにもかかわらず、非のない従業員たちを責め立てます。明確なリーダーシップがない組織では、対立は長引き、その影響は時間と共に膨らんでいきます。

4.モラルが下がる

ナポレオンは「リーダーは希望の商人である」と言いました。つまり、リーダーは組織に希望を与える存在です。しかし、リーダーが存在しなかったり、健全でないリーダーが存在する場合、従業員はむしろ希望を失い、士気は下がり、モラルが低下していきます。組織のモラルとは「トップに立つものへの信頼」 だからです。

5.生産性が下がる

強力なリーダーは、従業員たちの生産性を高める方法を見つけることに注力します。時にそれは、チャレンジやトレーニングの機会を与えることであり、従業員たちを励ましたり、勇気づけたり、インセンティブを与えたりすることでもあります。

すべての従業員が何もしなくても自律的に率先して正しいことをおこなうのであれば、リーダーなど必要ありません。
人はそれぞれ異なり、状況は常に変化しています。何が必要かを見極め、それを実行に移すにはリーダーシップのあるリーダーの存在が不可欠です。

6.組織の成功や成長が困難になる

組織の成功のためにどれだけリーダーシップが重要であるかという事実を多くの経営者たちが見逃したがっています。
なぜなら、その事実にリーダー自身が直面したくないからです。それを知りたくないのです。

7.パーパスやビジョンの棄損

リーダーがリードしない組織に起こる最悪の事態のひとつは、組織のパーパスやビジョンが形骸化し、理念が損なわれることです。
もし組織が正しいパーパスやビジョンを持ってスタートしても、有能なリーダーがいなければ、徐々にその意義は蝕まれていきます。先ほども述べたように、ビジョンは漂流し始め、チームは方向性を見失っていきます。

リーダーは繰り返しビジョンを伝え、自ら体現しなければなりません。しかし、リーダー自身が組織のビジョンにそぐわない行動を率先して取っていないでしょうか?もし思い当たる節があるのならば、組織の問題を引き起こしているのは間違くリーダー自身です。

~ ~ ~ ~ ~

最後に

以上、リーダーシップのないリーダーの特徴と彼らがもたらす結果について紹介しました。

私は以前書いた記事の中で、リーダーシップ不在の会社や、リーダーシップのない上司の下で働き、悩み苦しんでいる従業員の人たちに次のようなアドバイスを書きました。

残念ながらあなたが会社で権限を持っていない限り、会社全体を変えることはできません。
しかし、逆に言うと、あなたの権限内では組織を変えることができます。あなたが中間管理職であれば、あなたが指揮しているグループでまず改革の取り組みをしてみてはいかがでしょうか?
会社が掲げる目的や行動指針と矛盾した行動が会社の現実となってしまっている場合、あなた自らがその本来の目的に沿った行動をしてみてはいかがでしょうか?
たとえ部下がいない場合でも、少なくてもあなたはあなたの行動は変えることができます。

次回の記事では、リーダーシップのないリーダーの下で働く人たちはどうすればよいのか、マクスウェルが書籍の中でどう書いているかを見ていきます。

コメントを残す

CAPTCHA