組織改革マネジメント(OCM)では、改革の目的を明確にした後、組織のレディネス評価を行います。レディネス評価は、①文化、②オーナーシップ(コミットメント)、③キャパシティ(能力)の3点について、組織の変革に対する準備・自信の程度を測るもので、現状と変革によって達成される未来の理想的な状況を比較します。
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ようやく数投稿前から紹介しようとしていた変革のレディネス評価までたどり着きました。。。
変革のレディネス評価は、チェンジマネジメントのプロセスにおいて変革の目的を確認した後に行います。
何度も書きますが、Organizational Change Management(組織改革のマネジメントです。以下、OCMと略します。)において重要なのは、まずなぜ変革が必要か目的を明確にすることです。
OCMは組織の大きな変革を対象としますから、OCMの目的は、会社のビジョン、ミッション、経営理念、またはその一層下の中長期経営計画とリンクしたものになるはずです。
ビジョン、ミッションが暫く見直しされていない会社では、ビジョン、ミッションがピンとこない、将来どうありたいのか目指すところがよく分からない、共感できないという事もあると思います。その場合は会社の存在意義、ビジョン、ミッションと再度向き合い直す所から始めなければなりません。
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レディネス評価は、変革の目的を明確にした後、変革のスコープを決める前に行います。
「レディネス」とは直訳すれば「準備」で、ある課題対応や施策実行に対して、知識、経験、興味、ツールなどの必要な条件が整っているかどうかを測るものです。
レディネス(準備)が高まればコンフィデンス(自信)が高まります。
レディネス評価によって変革に対する個人と組織のコンフィデンス(自信)を知る事ができます。
変革を実現するには、コンフィデンス(自信)が必要です。
通常の仕事でもそうですね。
今まで全然やったことがないような仕事でやり方も分からなければ、やり遂げる自信は低いです。
今までやったことがなくても、やり方が明確に見えていたり、似たような業務を経験していれば自信の度合いは高いかもしれません。
やり方を良く分かっていて、実際に作業した事が過去に何度もあっても、いつも使っている道具が手元になく新しい道具を使わなければならない状況では自信がないかもしれません。
何回も同じ事を繰り返しているような業務なら100%の自信があるという事もあるでしょう。しかし、組織改革、OCMでは過去の変革と同じという事はありえません。
変革のレディネス評価結果に比較し、変革のスコープが大きすぎると、変革に十分な自信がなく成功しません。
レディネス、コンフィデンス(自信)が低い場合、2つのアプローチを組み合わせて対処します。1つは変革のスコープを小さくして変革のハードルを下げる事で、もう1つは変革のレディネス(自信)を上げる取り組みを行う事です。
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レディネス評価は、①文化、②オーナーシップ(コミットメント)、③キャパシティ(能力)の3点に関して行います。
①.企業文化が変化を受け入れるか?:組織の文化と提案された変更が整合するか。
②.オーナーシップ(コミットメント)があるか?:「認知⇒比較⇒支持⇒オーナーシップ」の段階評価。
③.キャパシティ(能力)があるか?:変革を成功させるために、支援的な知識、ツール、スキル、リソース、作業プロセス、システム、過去からの学習、経験等のキャパシティが十分か。
この3項目のうち2項目については、以前既に紹介しています。下記のリンクを参照下さい。
● オーナーシップ(コミットメント)があるか?
― 変革は「認知 ➡ 比較 ➡ 支持 ➡ オーナーシップ」を踏んでのみ成功する
● 企業文化が変化を受け入れるか?
― 成長できない企業の経営計画=戦略・財務目標はあるが「企業文化」が欠落
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レディネス評価では現在の姿と、変革を達成した後の将来の姿を比較します。
この方法は「ギャップ分析(Gap Analysis)」と呼ばれ、広く様々な方面で使われています。理想と現実の差異を課題と捉え、理想を達成する為には何が必要かを分析する方法です。
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「文化」の項目について言うと、組織企業文化の評価には、下記のような手法があります。
- 競合価値観フレームワーク:Competing Values Framework (CVF)
- 組織文化評価手法:Organizational Culture Assessment Instrument(OCAI)
- ホフステードの組織文化モデル:Hofstede’s cultural dimensions theory
- デニソン組織文化サーベイ:Denison Organizational Culture Survey(DOCS)
上記の組織文化評価のフレームワークは、アンケートやインタビュー等によって、組織文化を可視化するものです。
方法はフレームワークによって異なりますが、企業文化を与えられたいくつかのタイプに分類したり、複数の与えられた特徴(項目)で評価するものです。
このような評価は、ややもすると既存のフォーマットに沿って評価作業を受動的にこなすだけになり、例えば「評価合計100点満点で40点、わが社もまだまだだな頑張ろう。」で終わってしまい、「評価のための評価」になってしまう危険性があります。
OCMにおける評価の目的は改革を達成する事であり、組織文化を徹底的に評価する事や分類する事ではありません。
また、上記のような組織文化評価は、会社の文化を既にあるフォーマットに落とし込み、分類する・評価する形です。
しかし、組織・文化・課題は三者三様で、同じ組織・文化・プロジェクトは他に一つも存在しません。
他社にはないユニークな文化を持つ会社もあるでしょう。
上記フレームワーク以外にも評価シートの雛形は数多くあります。チェックリスト型で質問が30程度与えられ、組織を点数で評価するものです。
変革プロジェクトは複雑で、課題も組織の数、プロジェクトの数だけあり、標準的な既存の評価シートの質問表は個々のプロジェクトにぴったりあてはまりません。
既存のフォーマット上では適切に文化が評価できないため、目的に合わせてカスタマイズする作業、評価指標を組織・改革にフィットさせる作業が必要になります。
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具体的には、下記のような文化を表すキーワードにおいて、現状組織がどのような状態にあるのか、変革によってどのような状態を目指すのか、文章で明確にしていきます。
文化(キーワード) | 現状 | 目標 | 評価 |
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価値観 | |||
目的・使命 | |||
顧客価値・共創 | |||
忠誠心 | |||
自由・寛容性 | |||
規律・コントロール・統制 | |||
倫理観 | |||
心理的安全性 | |||
関心 | |||
行動性向 | |||
志向性 | |||
柔軟性・裁量性 | |||
一貫性・徹底 | |||
勇気・大胆さ | |||
迅速さ・アジリティ | |||
積極性・チャレンジ・好奇心 | |||
評価される人間像 | |||
評価される行動・成果 | |||
信頼・尊重 | |||
公平さ | |||
誠実さ | |||
謙虚さ | |||
透明性 | |||
明確さ | |||
性格・個性 | |||
努力・学習 | |||
リーン・改善・継続 | |||
明るさ・楽しさ・遊び | |||
楽観的 | |||
刺激的 | |||
創造的・好奇心 | |||
感謝 | |||
社交性・外向的・オープン | |||
共有・開示性・フィードバック | |||
コミュニケーション | |||
ダイバーシティ | |||
協調 | |||
一体感・チームワーク・協業 | |||
受容性 | |||
解決方法 |
現状を表す適当な文章が思い浮かばない場合はそれぞれのキーワードに対する事例を参考にカスタマイズします(ここでの事例の紹介は省略します)。
現状は把握できるが、未来の理想的な状況が分からない場合もあるでしょう。
その場合は、過去失敗した改革・プロジェクトの原因を掘り下げていくことで理想的な姿が見えやすくなるでしょう。
または、同様の改革を達成している他企業があると思います。その会社の現状をベンチマーキングする事で見えてくる事があるでしょう。
また「文化」そのものを評価・変革していくのは困難ですから、「現状どう行動しているか」「期待する行動は何なのか」、行動ベースで考えると見えやすくなるでしょう。
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キーワードは全部使う必要はありませんし、より適切なキーワードを加えても結構です。改革に影響するだろう項目を残し、関係ないと思われる項目については省略します。あまり多くの項目が残ると注力すべき点が分散してしまいますので、フォーカスすべき事項を絞っていきます。
評価(点数)は将来のあり方を5点満点とし、現状が5点未満の何点であるかになります。
現状も将来も5点であるならば、その項目に関しては基本的には対処する必要がないという事です。
この作業は個人・改革チームで行い、議論する事が必要になります。
一度限りでなく、アジャイル式に何度も実施します。最初に見えなかった視点が後で見えてくることがあります。変革プロジェクトのリソースやスコープとの兼ね合いで変化する事もあるでしょう。繰り返すうちに変革で対処する点が明確になってきます。
その2に続く。。。