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書籍紹介:48 laws of power 権力に翻弄されないための48の法則

  • 投稿カテゴリー:人が変わる
  • 投稿の最終変更日:2024年8月19日
  • Reading time:10 mins read

すべては人の力と力のゲームです。すべての人がその人なりの力を持っています。力のゲームに勝つ上で重要なのは、感情をコントロールする能力と忍耐力です。自分の力を利用するためには、自分の外見を操る能力も必要です。さらに必要なのは人の隠された動機を知ることです。動機が理解できれば、人を操作することができます。

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はじめに

以前も書きましたが、私は日本人が海外で活躍するのを見るのが大好きです。
大谷翔平のホームランや、井上尚弥が相手をノックダウンする瞬間は、Youtubeで家族から呆れられるくらい繰り返し見ます。
スポーツ選手だけでなく、他の分野で日本人が活躍するのを見るのも好きですね。

音楽で言えば、私のお気に入りのプログレッシブハウスと呼ばれるジャンルではShingo Nakamura、テクノ/ハウスDJのHiroko Yamamura、もっとメジャーなところではXGなどの日本人たちの音楽を聴くのもYoutubeを見るのも好きです。すこし前になりますが、XGの曲「woke up」は衝撃的でした。

そのXGの「woke up」の歌詞の中に「.. 48 laws of power, little girl with a big motor on a kid though, mhm ..」というフレーズがあります(下のYoutubeの1:20)。

48 laws of power」は、1998年にアメリカで出版された、権力の生臭さや陰湿さ、人間の腹黒さを書いた本のタイトルです。曲全体を通して、とても日本人が書けるような歌詞ではないので、アメリカ人の作詞なのでしょうが、最初に聴いた時「48 laws of powerを歌詞に入れるとはえぐい!」と思ったものです。

ところで、この書籍「48 laws of power(邦題)権力に翻弄されないための48の法則」は1998年に原書が発刊され、海外ではベストセラーとなり、今も売れ続ける本ですが、日本ではそこまでは知られていません。
今回はこの本を紹介していきましょう。なお、いつものように私は英語版しか読んでいませんので、日本語版との言葉の使い方の違い等はご了承下さい。

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昔も今も力の争い

まず、面白いのは、本の筆者ロバート・グリーン(Robert Greene)がこの大ヒット作を書くに至ったエピソードです。

グリーンは若いときから作家になりたかったものの、何を書きたいのかがはっきりしていませんでした。大学を卒業したあとジャーナリズムの世界に入り、ライターやエディターとしてキャリアを積み重ねます。数年ほど働いた後、あるエディターから「君は物書きには向いていない。とても奇妙で一貫性のない文章だ。キャリアを変えた方がいい」と指摘を受けます。

グリーンは仕事を辞め、アメリカからヨーロッパに移り、様々な仕事に就きます。
アメリカに戻ってからも職を転々とします。建設現場の仕事をしたり、探偵をしたり、映画製作のアシスタントをしたり、全部で50もの仕事を経験しました。36歳になっても定職につかず、両親はとても心配しました。

そんな状況の中、イタリアで仕事をしていたときに、ある人と話をしていて、本のアイデアがあるのかと尋ねられます。

グリーンに「人が持つ力の法則」についてのアイデアが浮かびます。グリーンは歴史が好きでした。また、それまで数多くの職業を経験してきました。グリーンは気が付きます。現代の人たちも、過去の権力者たちも、身分の上下を問わず、多くの人が力を求めていて、力を手に入れるために様々な戦略を取っていると。

権力がある人たちだけでなく、権力がない人たちも実は無いなりの力を持っていてそれを行使しています。歴史上の人物たちを知り、様々な職を経験し色んな人たちと接してきて、グリーンは人が持つ力の使い方には共通したルールがあると気付いたのです。

そのような話を返したところ、絶対に本にするべきだと勧められました。その結果が、1998年に発刊されたこの本なのです(下のTEDイベントで、グリーンが当時のエピソードを語っています)。

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全てはパワーゲーム

他人や身の回りの状況に対して無力であるという感覚は、私たちにとって耐え難いものです。無力感は、私たちを惨めな気持ちにします。

誰も自分が持つ力を失いたいとは思っていません。多くの人たちが自分が持つ力を維持したい、拡大したいと思っています。しかし、権力欲を前面に出したり、露骨に権力を振るうことは危険です。成功するためには、公正で礼儀正しく自分を見せなければなりません。そのためには、自分が持つ力に対してとても繊細である必要があります。親しみやすくも狡猾で、民主的でありながらもずる賢くならなければならないのです。

この絶え間ない二面性のゲームは、私たち人類の歴史で古くからあるものです。

歴史は常に権力者、つまり王、女王、皇帝、指導者を中心に形成されてきました。
宮廷を埋め尽くした廷臣たちは特に微妙な立場にありました。彼らは主人に仕えなければなりませんが、もしへつらっているように見えたり、あまりにも露骨に機嫌を取ろうとすると、周りの廷臣たちが対抗するでしょう。例え、巧妙な手腕を持つ熟練した廷臣たちでさえ、彼らを押しのけようと企む他の廷臣たちからつねに身を守らなければなりませんでした。

きらびやかさの裏には巧妙さがありました。貪欲、嫉妬、欲望、憎悪といった感情が錯綜していました。あからさまな権力行使をする君主は嫌われ、密かな抵抗にあいます。巧妙で長期的な戦略を持つものによって、あからさまには裏切りにあうことなく、しかしやがてその権力の座を失っていきます。成功した廷臣たちは、時間をかけて、すべての動きを間接的に行うことを学びました。

宮廷の生活は、常に警戒と戦術的思考を必要とする終わりのないゲームでした。
そして今日も、私たちは宮廷人と非常によく似たパラドックスに直面しています。

私たちは文明的で、礼儀正しく、民主的で、公正に装わなければなりません。
しかし、ルールを馬鹿正直に守ったり、文字通りに受け止めたりすると、周囲の人たちに打ち負かされてしまいます。

古くから人類が継続して持つ同じ醜い感情が、今も私たちの心を支配しています。同じゲームが今も続いているのです。
昔の廷臣のように、間接的な技術を習得し、誘惑し、魅了し、欺き、巧みに相手を出し抜くことができれば、権力の頂点に達することができるでしょう。相手に気づかれずに、自分の意のままに従わせることができるでしょう。相手が自分のしたことに気づかなければ、恨みも抵抗も生みません。

常に善良であろうとする人は、善良でない大勢の人たちの中で破滅することになる。
     ~ ニッコロ・マキャベリ
Any man who tries to be good all the time is bound to come to ruin among the great number who are not good
     ~ Niccolò Machiavelli

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力が無いように見える人たちも、無いなりの力を持つ

もしあなたに権力がなくても、昔の廷臣のように、間接的な技術を習得し、他人を誘惑し、魅了し、欺き、巧妙に相手を出し抜くことができれば、力を手に入れることができるでしょう。

そのような巧妙さや狡さを批判する人たちがいます。そのような表面的には善良さや公正さや良心を訴える人たちにも気を付けなければなりません。実はそのような誠実さを訴えるプレイヤーこそが、力を最も巧みに操ることがあるからです。つまり、このようなタイプの人は、自分の弱さや権力のなさを正当化して武器として使っているのです。自分の弱さを見せつけたり、あらゆる領域で平等を要求することは、権力ゲームにおいて実はとても効果的で、巧妙で欺瞞的な戦略なのです。

ゲームを回避する方法はいくつかあります。例えば、そもそもゲームに参加しないことや、完全な正直さと率直さを貫くことです。

しかし、ゲームに参加していないと主張する人は、権力を追い求めているという非難から身を守るために、純真な雰囲気を醸し出している場合があります。また、完全に正直であることは、必然的に多くの人々を傷つけ、侮辱することになり、その結果自分自身も傷つけることになります。

完全な正直さと率直さを維持することはほとんど実行不可能な選択肢です。実際は、100%正直な発言、個人的な動機が全くない発言など存在しません。実際、正直さを訴える人たちは、自分の高貴さや、心の優しさ、無私の性格を周囲の人たちに納得させるための力の戦略を使っているのです。そのゲームは恐ろしいほど効果的であることがよくあります。もう一度言いますが、純真さを見せたり誇示したりする人は、誰よりも純真ではありません。

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力の法則の例

では次に、ロバート・グリーンがこの本の中で書いている権力のルールをいくつか取り上げて紹介しましょう。

力の法則1:決して主人より輝いてはいけない Never Outshine the Master

自分より上の立場にいる人には、常にその人の方が自分より優れていると感じさせ、喜ばせる必要があります。ボスに感銘を与えたいという気持ちから、自分の才能を誇示しすぎてはいけません。そうしてしまうと、逆にボスに恐怖や不安を抱かせてしまうかもしれません。

主人を凌駕しようとすることは最悪の過ちです。能力の高さを証明することで主人の愛情を勝ち取っていると思い込むことは、致命的ですがよくある間違いです。
部下の方が自分よりも能力があると思い知らされたボスは、当然のことながら、あらゆる種類の恨み、嫉妬、不安、恐怖に駆り立てられた行動を取ります。
彼らは自分の地位に安住し、知性、機知、魅力において部下たちよりも優れていると感じ続けていたいのです。力を得るためには、主人を実際よりも輝かしくさせておくのです。

力の法則4:必要以上のことを言わない Always Say Less Than Necessary

言葉で人を感服させようとして多くのことを言えば言うほど、平凡な印象を与えてしまいます。力を持つ人は、少ない言葉で人を感動させ、深遠な印象を与えます。多くを言えば言うほど、愚かなことを言う可能性が高くなります。あなたがうっかり言ったことで相手を怒らせることがあります。

権力は多くの点で外見のゲームです。周囲の人たちから自分がどのように見えるかをコントロールするゲームです。必要以上に言わないことで、実際よりも自分を大きく、かつ読みにくくすることできます。あなたが他人に対して明らかにするものを注意深くコントロールできれば、あなたの意図が見抜かれることはありません。

力の法則 9: 議論で勝とうとするのではなく、行動で勝つ Win Through Your Actions, Never Through Argument

議論で相手に打ち勝ったと思っていても、独りよがりの勝利である可能性があります。相手は礼儀正しくあなたに同意したように見えるかもしれません。しかし、心の底では煮えくり返っているかもしれません。他人の恨みや悪意を駆り立てれば、瞬間的な勝利よりもはるかに強く長い負の影響を及ぼす可能性があります。言葉には、相​​手の気分や不安に応じて解釈されるという、油断できない力があります。

どんなに優れた議論でも、確固たる根拠を見せなければ、完全に相手を説得することはできません。自分の考えを実証するには、相手が防御的にならず、説得を受け入れやすくすることです。そのためには自分の言葉ではなく、行動を見せることです。行動は議論よりもはるかに強力です。一言も言わずに行動のみで他人を説得させる方がはるかに強力です。口で説明するのではなく、行動で証明するのです。相手に物理的に自分の意図を感じさせ、相手に相手なりの言葉で納得してもらうようにするのです。

法則18:孤立は危険。自分を守るために垣根を築いてはいけない Do Not Build Fortresses to Protect Yourself – Isolation is Dangerous

世界は危険で、敵はどこにでもいます。誰もが自分を守らなければなりません。そのために自分の周囲に要塞を築き、誰も近づけないようにすることは安全なように見えます。しかし、孤立は自分を保護するよりもむしろ多くを危険にさらします。貴重な情報網やネットワークから自分を遮断し、逆に簡単に攻撃されるようになります。

法則20:誰にもコミットしない  Do Not Commit to Anyone

急いで誰かの味方に付こうとするのは愚かです。自分以外のどの側や大義にもコミットしないでください。独立性を維持することで、あなたは争いに巻き込まれず、逆に周囲の人たちに求められる存在になることができます。

完全に誰かの味方になってしまうと、その人たちに対するすべての力を失います。距離を置いていれば、彼らに対して力を保持することができます。彼らに希望を与えるのは重要です。しかし、決して100%の満足を与えてはいけません。コミットした瞬間に魔法は消え去ります。あなたは他の人たちと同じになります。

権力は外見に大きく左右されるため、自分のイメージを高めるトリックを学ばなければなりません。特定の人やグループにコミットすることを避けることは、その1つです。それができれば、怒りではなく、ある種の尊敬を招きます。グループや関係に屈するのではなく、自分をつかみどころのないものにするのです。

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48の力の法則

以下は、箇条書きのみですが、この本でグリーンが紹介している48の力の法則のすべてです。

法則 1:決して主人より輝いてはいけない
法則 2:友人を信用しすぎてはいけない。また、敵を利用する方法を学ばなければならない
法則 3:自分の意図を他人に分からないようにする
法則 4:必要以上のことを言わない
法則 5:評判は多くのことを左右する。自分が築き上げた評判は命をかけて守る
法則 6:注目を引くためにはどんな犠牲を払っても構わない
法則7:できるだけ他の人に自分のために仕事をしてもらう、しかし常にその功績は自分のものにする
法則8:他の人を自分のところに呼び寄せる。そのために餌を巻く
法則9:議論で勝とうとするのではなく、行動で勝つ
法則10:不幸や不運は伝染するので避ける
法則11:人をあなたに依存させ続ける
法則12:被害者の心を緩めるために、作為的に正直さと寛大さを利用する
法則13:助けを求めるときは、他人の利益に訴える。他人の慈悲や好意に訴えてはならない
法則14:友人を装い、スパイとして動く
法則15:敵を完全に打ち負かす
法則16:留守を利用して尊敬と名誉を高める
法則17:他人を恐怖に陥れ続ける。予測不能な雰囲気を醸し出す
法則18:孤立は危険。自分を守るために高い垣根を築いてはいけない
法則19:自分が誰と関わっているのかをよく知る。間違った人を怒らせてはいけない
法則20:誰にもコミットしない
法則21:騙されやすい人を装う。敵よりもバカっぽく装う
法則22:降伏戦術を使う。弱さを力に変える
法則23:力を集中する
法則24:完璧な廷臣を演じる
法則25:自分自身を再構築する
法則26:自分の手を汚さない
法則27:人々の欲求を利用してカルト的な支持者を作る
法則28:大胆に行動する
法則29:事前に最後まで計画しておく
法則30:物事を達成しても苦労を人に見せず、楽に達成したように見せる
法則31:選択肢をコントロールする。自分が配ったカードで他の人にプレイしてもらう
法則32:他人の空想に乗れ
法則33:他人の弱みを見つける
法則34:自分のスタイルに忠実になれ。王様のように振舞えば、王様のように扱われる
法則35:タイミングをマスターする
法則36:手に入らないものは気にかけないでおく。無視するのが最高の復讐
法則37:壮観さは人を惹きつける
法則38:自分が望むように考える。しかし、その考えを表には出さず、他人と同じように振舞う
法則39:魚を捕まえるには水をかき回せ
法則40:ランチをご馳走してもらうのをやめる
法則41:偉大な人の領域には立ち入らない
法則42:羊飼いを打てば、羊は散り散りになる
法則43:人の感情に働きかける
法則44:防御するのをやめ、鏡のように相手と同じように振る舞い激怒させる
法則45:変革の必要性を説くが、一度に改革しすぎない
法則46:完璧すぎるように見せない
法則47:目標以上のことを達成しようとしない。勝利するには、やめるべきタイミングを知っておく
法則48:水のように変化し適応し続ける

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さいごに

以上、ロバート・グリーンの48の力の法則を紹介しました。
力のゲームをマスターするためには、世の中の見方、視点を変えることが必要です。これらのほとんどは自然に身につくようなスキルではないため、努力と何年もの訓練が必要です。しかし、訓練によって、力の法則をより簡単に使うことができるようになります。

これらのスキルの中で最も重要な基礎的な能力は、自分の感情をコントロールする能力です
他人や状況に対して感情的に反応してしまうことは、力の法則を利用することの最大の障壁になります。感情を表現することで一時的な満足感は得られるかもしれませんが、それよりもはるかに多くの代償を払うことになります。
感情は理性を曇らせます。状況を的確に把握できなければ、状況に備えたり、ある程度のコントロールをもって対応することはできません。
特に怒りは最も致命的な感情的反応です。なぜなら、怒りは自分の視界を最も曇らせるものだからです。また、怒りは波及効果も持ち、敵を強める効果を持ちます。敵を破滅させようとしている場合は、怒りを見せるよりも、友好的なふり​​をして敵を油断させておく方がはるかに効果的です。

また、力の法則を利用するためには、自分の見た目や印象を操る能力が必要です。そのためには、多くの仮面をかぶり、トリックを学ばなければなりません。それを不誠実なものとして見るべきではありません。人間同士の交流には、さまざまなレベルである意味の欺瞞が必要です。権力は本質的に非道徳的であり、習得すべき最も重要なスキルの1つは、善悪ではなく状況を見る能力です。

忍耐は愚かな失敗からあなたを守ってくれます。感情をコントロールするのと同じように、忍耐はスキルであり、自然に身につくものではありません。しかし、力には自然なものは何もありません。忍耐をマスターすれば、あなたは時間を味方にすることができます。時間は大きな武器になります。

繰り返しますが、力はゲームです。
人の隠された動機を理解することは、力を獲得する上で重要です。人の動機を理解できれば、あなたは人を操作することができます。

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